永住申請に「厚生年金30年」が必要になる?入管庁の厳格化案を現行要件と分けて解説
この解説の英語版も、同じ重要事項に対応する内容で公開予定です。
Read in English現在の永住許可ガイドラインは、税金、公的年金、公的医療保険料などの公的義務を適正に履行していることを求めています。一方、「厚生年金30年水準」は将来の年金受給見込み額を評価するための基準として報道されたもので、具体的な計算方法や最終文言は正式公表されていません。
1.現在正式に適用されている永住許可要件
出入国在留管理庁が公表している現行ガイドラインでは、永住許可の法律上の要件を大きく次の3点に整理しています。
素行が善良であること
法令を守り、日常生活でも社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
独立の生計を営めること
公共の負担にならず、資産や技能等から将来も安定した生活が見込まれること。
日本国の利益に合すること
在留期間などの条件に加え、納税・年金・医療保険料・届出等の公的義務を適正に履行していること。
現在も年金の納付状況は審査対象です
「30年」という数字が現行ガイドラインに書かれていないからといって、年金が審査と無関係という意味ではありません。現在の提出書類案内でも、多くの申請区分では過去2年間に加入した公的年金制度に応じた納付状況の資料が求められています。申請区分によって確認期間が異なる場合があります。
特に国民年金の加入期間がある方、転職・退職による切替期間がある方、会社経営者・事業主である方は、本人の加入記録だけでなく、事業所側の社会保険料納付資料が必要になることがあります。
2.2026年7月に報道された改定案
2026年7月24日から25日にかけて、出入国在留管理庁が永住許可ガイドラインの厳格化案をまとめ、政府が新たな基準を設ける方針であると報じられました。主な報道内容は次のとおりです。
| 項目 | 現在の正式な取扱い | 2026年7月の報道内容 | 現時点の注意 |
|---|---|---|---|
| 年収 | 独立生計要件の中で、家族構成、継続性、資産等を含めて判断。 | 原則として日本人世帯の平均を上回る水準を求める。 | 用いる統計、金額、本人収入か世帯収入かは未公表。 |
| 年金 | 公的年金保険料の適正な納付状況を確認。 | 将来の年金受給見込み額が、基準年収で厚生年金に30年加入した場合の水準に達することを原則求める。 | 実加入30年を必須とする正式文言や計算式は公表されていない。 |
| 預貯金等 | 独立生計要件の判断で資産を考慮することがある。 | 年金見込みが基準に足りない場合、預貯金等で補充できれば要件を満たすと評価する。 | 必要額、対象資産、計算期間は未公表。 |
| その他 | 素行、在留状況、公的義務等を総合審査。 | 日本語能力、日本の制度・ルールの理解度等も考慮する。 | 試験、証明方法、対象者、例外の詳細は正式発表待ち。 |
適用時期も現時点では「報道内容」です。
共同通信は、2026年10月1日付でガイドラインを改定し、2027年4月の申請分から原則適用すると報じています。ただし、最終ガイドライン、経過措置、申請区分ごとの例外などは正式公表を確認する必要があります。
3.「厚生年金30年水準」は、実際の加入期間30年と同じ意味ではありません
報道の文言は、申請人が厚生年金に「実際に30年間加入済みであること」を直接求めるものではなく、将来の年金受給見込み額を比較するために「一定の年収で30年加入した場合の年金額」を基準として用いる内容です。
「30年未満だから永住申請ができない」という単純な加入年数基準が正式決定したわけではありません。報道案では、年金見込み額が基準に届かない場合に預貯金等で補える考え方も示されています。
申請人によって年金見込み額が異なる理由
- 厚生年金の加入期間と、その間の標準報酬月額・標準賞与額
- 国民年金の納付済期間、免除・猶予・未納の状況
- 転職、退職、会社設立、扶養関係の変更に伴う制度の切替
- 年齢と、今後どの程度加入を継続する前提で見込み額を算定するか
日本年金機構の「ねんきんネット」では、月別・制度別の加入記録、加入月数、年金見込額を確認できます。ただし、永住審査でどの画面・どの時点の見込み額を用いるかは、今後の正式な案内を待つ必要があります。
4.正式なガイドライン又は計算方法が未公表の事項
現段階で、次の点を断定することはできません。
- 「日本人世帯の平均」に使用する統計、対象世帯、基準年及び具体的な金額
- 本人のみの年収か、配偶者等を含む世帯収入か、扶養人数をどう反映するか
- 年金見込額を何歳時点で、どの加入継続条件により計算するか
- 国民年金、共済年金、海外の公的年金、企業年金、iDeCo等をどう扱うか
- 年金不足を補う預貯金等の種類、必要額、換算期間及び名義の範囲
- 日本人・永住者の配偶者、高度人材、若年者等に対する特例・経過措置
- 日本語能力及び制度理解を証明する方法、必要水準、免除の有無
5.今から確認したい実務上の4つの視点
正式決定前に「申請できない」と結論づける必要はありません。一方、現在の審査でも重要な年金記録、公的義務、収入の継続性は早めに点検できます。
本人の視点
現在の在留資格、在留期間、家族構成、収入推移、年金加入歴、納付期限、免除・猶予・未納、預貯金等を時系列で整理します。
勤務先・事業所の視点
社会保険への適用、資格取得・喪失届、標準報酬、保険料納付状況を確認します。申請人が事業主である場合は事業所側の納付資料も重要です。
提出資料の視点
ねんきんネット、被保険者記録照会回答票、国民年金保険料の領収証書、社会保険料納付証明書、課税・納税証明書、預貯金資料等の取得可否を確認します。
審査傾向の視点
単独の金額や加入年数だけでなく、期限内の履行、生活の安定性、申請内容と資料の整合性が重要です。正式改定後は新しいチェックシート等も確認します。
基礎年金番号等の取扱いにも注意してください。
入管庁の提出書類案内では、基礎年金番号、保険者番号、被保険者等記号・番号が記載された資料を提出する場合、復元できない状態に黒塗りするよう案内されています。
6.よくある質問
Q1.厚生年金に30年間加入していなければ、現在は永住申請できませんか?
Q2.国民年金中心の人は、新基準では不許可になりますか?
Q3.未納分を申請前に支払えば問題はなくなりますか?
Q4.新基準はいつから適用されますか?
Q5.今のうちに何を準備すればよいですか?
7.確認した主な公表資料・報道
本記事は2026年7月26日時点の公表情報及び報道を基にしています。報道された案は正式決定済みのガイドラインと同一ではありません。実際の申請可能性、許可可能性、必要資料及びリスクは、在留資格、家族構成、収入、年金・税・医療保険の履行状況、資産その他の個別事情と今後の正式発表によって異なります。