スウェーデン新法と日本の送還統計から見る在留管理の厳格化──数字の読み方と実務上の注意点

トミーズリーガルサービス行政書士事務所
Immigration News and Practical Compliance

スウェーデン新法と日本の送還統計から見る在留管理の厳格化

海外の制度改正や日本の送還統計は、数字だけを切り取ると誤解が生じやすい分野です。制度の違い、統計の内訳、外国人本人・雇用主が注意すべき実務ポイントを整理します。

在留管理 送還統計 不法就労防止 外国人雇用

近年、各国で外国人の在留管理を厳格化する動きが見られます。ただし、スウェーデンの新法と日本の退去強制・送還統計は、制度の内容も法的効果も異なります。SNS上の数字だけで判断するのではなく、一次情報と制度上の区分を確認することが重要です。

1.SNS上の「強制送還」情報は数字の読み方に注意

SNSでは、「欧州で在留管理が厳しくなった」「日本でも送還が増えている」といった投稿が拡散されることがあります。こうした情報の中には、重要な事実を含むものもありますが、制度の違いや統計の内訳が省略されている場合もあります。

入管・在留資格に関する情報は、言葉の意味を正確に区別する必要があります。同じ「送還」「退去」「在留許可取消」という表現でも、国によって手続、要件、法的効果は異なります。

ポイント:この記事では、特定の投稿や意見を評価するのではなく、スウェーデン議会の公式発表と日本の入管庁資料をもとに、制度差と数字の読み方を整理します。

2.スウェーデン新法の概要

スウェーデン議会は、在留許可の付与や取消しにおいて、外国人の生活態度・素行をより重視する制度改正を可決しています。公式発表では、法令、規則、当局決定に従わないこと、多額の債務、不誠実な方法で生計を立てることなどが例示されています。

この改正は、在留許可の取得・維持において、本人の生活態度や法令遵守状況をより重視するものです。施行日は2026年7月13日とされています。

注意:スウェーデンの制度は日本の入管制度とは別制度です。日本でも素行、納税、社会保険、就労状況、提出資料の整合性が問題になる場面はありますが、スウェーデン新法と日本の在留審査を同一に扱うことはできません。

3.日本の令和7年送還統計の読み方

日本の出入国在留管理庁資料では、令和7年の「退去強制令書による送還者数」は7,563人、「出国命令により出国した者の数」は9,789人とされています。

また、令和7年中に護送官を付して送還した者は318人で、過去最高とされています。ここで重要なのは、7,563人と318人は同じ意味の数字ではないという点です。

退去強制令書による被送還者数7,563人の内訳には、自費出国6,677人、国費送還・護送官なし505人、国費送還・護送官あり318人、その他63人が含まれています。したがって、「7,563人全員が護送官付きで強制送還された」と読むのは正確ではありません。

Open passport with immigration stamps showing travel history
送還統計や在留管理を理解するには、数字だけでなく制度上の区分を確認することが重要です。

4.日本で特に注意したい不法就労の問題

日本の入管実務で特に注意すべき分野の一つが、不法就労や資格外活動です。本人が「少しだけなら大丈夫」と考えていても、在留資格で認められていない活動や、資格外活動許可の範囲を超える就労は、更新・変更・永住申請などで問題になる可能性があります。

雇用主側にも注意が必要です。在留カードの確認を怠ったり、在留資格に合わない業務に従事させたり、資格外活動の時間制限を管理しなかったりすると、不法就労助長のリスクが生じることがあります。

5.既存の在留資格がある人も「許可後の管理」が重要

在留資格は、許可を受けたら終わりではありません。更新、変更、永住申請、在留資格取消、退去強制などの場面では、許可後の生活状況や就労状況が確認されることがあります。

  • 在留期限を過ぎていないか
  • 現在の在留資格で認められた活動をしているか
  • 資格外活動許可の範囲を超えて働いていないか
  • 転職、退職、職務内容変更がある場合に説明できるか
  • 税金、国民健康保険、年金、社会保険の状況に不整合がないか
  • 申請書、理由書、添付資料の内容が実態と合っているか

6.雇用主・支援機関が確認すべきこと

外国人雇用では、本人だけでなく、雇用主や支援機関の確認体制も重要です。特に、在留カードだけで判断できないケースでは、パスポート、指定書、雇用契約書、職務内容、勤務実態などを分けて確認する必要があります。

本人側の確認

  • 在留カードの有効期限
  • 在留資格と活動内容
  • 資格外活動許可の有無と範囲
  • 転職・退職・届出状況

雇用主側の確認

  • 業務内容と在留資格の一致
  • 雇用契約書・職務内容説明
  • 勤務時間・副業管理
  • 社会保険・税務処理
Passport and travel documents prepared for an immigration compliance review
在留資格の実務では、本人、勤務先、提出資料、審査上の注意点を分けて整理することが重要です。

7.関連する詳しい解説ページ

この記事では、ニュースと統計の読み方を中心に整理しました。具体的な手続や確認方法については、次のページも参考にしてください。

8.まとめ:制度差と統計を正しく読み、早めに整理を

各国で在留管理を厳格化する動きは見られますが、国によって制度は異なります。スウェーデンの新法、日本の退去強制制度、送還統計、不法就労対策を同じものとして扱うことはできません。

重要なのは、感情的な情報に振り回されることではなく、一次情報、制度上の区分、統計の内訳を確認することです。日本で生活・就労する外国人本人も、外国人を雇用する会社も、在留資格、就労内容、税金・保険、提出資料の整合性を早めに整理しておくことが大切です。

在留資格・外国人雇用で不安がある方へ

在留資格の更新・変更、永住申請、資格外活動、外国人雇用管理に不安がある方は、現在の状況を整理したうえで、早めにご相談ください。

トミーズリーガルサービス行政書士事務所では、外国人本人・勤務先・提出資料・審査上の注意点を分けて確認し、必要な手続きとリスクを整理します。

参考:Sveriges Riksdag “Stricter and clearer requirements regarding moral character for residence permits”出入国在留管理庁「令和7年の出入国在留管理業務の状況」