在留外国人の91%が日本での生活に満足|物価高・低賃金・入管厳格化から考える日本の魅力と課題
在留外国人の91%が日本での生活に満足|物価高・低賃金・入管厳格化から考える日本の魅力と課題
日本は外国人にとって「暮らしやすい国」なのか。入管庁調査をもとに、満足理由、不満理由、給与水準、在留制度の厳格化まで整理します。
English version: 91% of Foreign Residents Are Satisfied with Life in Japan
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出入国在留管理庁が公表した令和7年度「在留外国人に対する基礎調査」によると、日本での生活に「満足している」「どちらかといえば満足している」と答えた在留外国人は全体の91%に上りました。
これは日本社会にとって前向きな結果です。しかし、詳しく見ると、満足理由は居住環境、文化・習慣、治安である一方、不満理由では物価高、給料の低さ、差別が目立ちます。
在留外国人の生活満足度は91%
出入国在留管理庁は、日本に中長期で在留する外国人を対象とした令和7年度「在留外国人に対する基礎調査」の結果を公表しました。
同調査によると、日本での生活に「満足している」「どちらかといえば満足している」と回答した外国人は全体の91%に上り、前年度から約3ポイント上昇しました。
この結果は、日本社会にとって明るい材料です。日本で暮らす外国人の多くが、日本での生活環境そのものには高い評価をしていることが分かります。
ただし、この数字だけを見て「外国人受入れに大きな問題はない」と考えるのは早計です。重要なのは、外国人が日本の何に満足し、何に不満を感じているのかを具体的に見ることです。
満足理由は「居住環境・文化習慣・治安」
満足している理由として最も多かったのは、「居住環境がよいから」でした。清潔な街、整備された公共空間、安定した生活インフラなどが評価されていると考えられます。
これに続いて、「日本社会の文化や習慣が合うから」「治安がよいから」が挙げられています。
つまり、日本は外国人にとって、清潔で、安全で、日常生活を送りやすい国として評価されているといえます。公共交通、医療、行政サービス、食文化、社会秩序なども、日本での生活満足度を支える要素になっていると考えられます。
不満理由は「物価高・給料の低さ・差別」
一方で、不満理由を見ると、別の側面が見えてきます。
令和7年度調査では、「物価が高いから」が不満理由として最も多く、前年度から大きく上昇しています。これに続いて、「給料が安いから」「外国人に対する差別があるから」が挙げられています。
ここから見えるのは、日本が「暮らしやすい国」と評価されている一方で、「十分に稼ぎやすい国」とは必ずしも受け止められていないという現実です。
物価高が不満理由のトップになったことは、特に重要です。日本で生活する外国人にとって、家賃、食費、光熱費、交通費、教育費などの上昇は、生活実感に直接影響します。給与が十分に上がらないまま物価が上昇すれば、生活満足度は高くても、将来への不安は大きくなります。
仕事上の困りごとは「給料が低い」が最多
仕事上の困りごとについても、「給料が低い」が最多とされています。また、「休みがとりにくい」「労働時間が長い」といった回答も目立っています。
日本の生活環境や治安は高く評価されていても、給与水準、物価、労働条件の面では課題が残っています。
外国人労働者にとって、給与が低いことは単なる不満にとどまりません。在留期間更新、永住許可申請、家族の呼び寄せ、住宅契約、子どもの教育、将来の貯蓄にも影響します。
受入れ企業にとっても、外国人材の定着を考えるのであれば、在留資格に合った業務内容だけでなく、給与、休暇、労働時間、社会保険、職場でのコミュニケーションを含めた総合的な雇用管理が必要です。
海外と比べた日本の給与水準
この点は、海外との給与水準の比較からも説明できます。
OECDの平均年収データによれば、日本の2024年の平均年収は購買力平価換算で約49,446米ドルです。韓国は約50,947米ドル、ドイツは約69,433米ドル、米国は約82,933米ドル、OECD平均は約61,147米ドルとされています。
この比較から見ると、日本は治安や生活環境では評価されやすい一方、給与水準では米国、ドイツ、カナダ、韓国などの主要就労先と比べて見劣りしやすい状況にあります。
もちろん、給与水準だけで生活満足度は決まりません。治安、医療、公共交通、清潔な生活環境、食文化、子育て環境などを含めれば、日本に住み続けたいと感じる外国人が多いことは十分理解できます。
しかし、高度人材、IT人材、研究者、専門職、起業家などが移住先や就労先を比較する場合、給与水準の低さは日本の大きな弱点になります。生活環境の良さがあっても、物価上昇と賃金の伸び悩みが続けば、「日本は安全で住みやすいが、将来の経済的展望を描きにくい国」と受け止められる可能性があります。
入管法制・在留審査の厳格化の影響
さらに、近年の入管法制・在留審査の厳格化も、外国人の将来設計に影響します。
たとえば、在留資格「経営・管理」については、令和7年10月16日に上陸基準省令等の改正が施行され、1人以上の常勤職員の雇用、3,000万円以上の資本金等、相当程度の日本語能力などが求められる制度へ変更されています。
この改正は、ペーパーカンパニーや実体の乏しい事業による在留資格取得を防ぎ、制度の信頼性を守るための措置といえます。
一方で、外国人起業家にとっては、日本で小規模に事業を始めるハードルが大きく上がったことになります。IT、コンサルティング、貿易、小規模サービス業など、最初は少人数・低固定費で始めたい事業にとっては、日本で起業する選択肢が取りにくくなる可能性があります。
永住許可制度についても、令和6年入管法等改正法により、公的義務の履行や公租公課の支払がより重視されています。入管庁は、病気や失業など本人に帰責性が認めがたい事情まで一律に取消しを想定しているわけではないと説明していますが、外国人本人から見れば、永住後も制度変更によって在留の安定性が揺らぐのではないかという不安は残ります。
実務上のポイント:厳格化そのものを一律に否定する必要はありません。不正取得、不法就労、ペーパーカンパニー、税・社会保険逃れへの対応は、制度の信頼性を守るために必要です。
しかし、日本が外国人に選ばれる国であり続けるためには、単に審査を厳しくするだけでは足りません。適正な在留管理を行いながら、給与水準、労働環境、日本語支援、家族帯同、永住や長期在留への予見可能性を高めることが重要です。
外国人向け情報発信ではSNSも重要
令和7年度調査では、外国人の情報入手手段としてSNSが非常に重要であることも示されています。複数回答でSNSが8割弱と最も多く、最も使うSNSはFacebook、YouTube、TikTokが続くとされています。
在留資格、永住、家族滞在、就労制限、転職、資格外活動、外国人雇用管理などの情報は、SNS上で誤って伝わることも少なくありません。
だからこそ、専門家が、法令と入管実務に基づいた正確な情報を、分かりやすく発信することが重要です。
まとめ:日本は暮らしやすい。しかし、課題も明確である
在留外国人の91%が日本での生活に満足していることは、日本社会の大きな強みです。
ただし、その満足は主に、清潔な居住環境、文化・習慣との相性、治安の良さによって支えられています。一方で、物価高、給料の低さ、差別、休みにくさ、長時間労働、在留制度の厳格化への不安も存在します。
外国人受入れをめぐる議論では、感情的な賛否ではなく、統計、賃金、生活コスト、入管法制、企業の雇用実務を総合して考える必要があります。
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