「永住権」は法律上の権利?永住許可・永住者・取消制度を行政書士が解説
「永住権」は法律上の権利?永住許可・永住者・取消制度を行政書士が解説
小野田紀美大臣の「永住権ではなく永住許可」という趣旨の発言をきっかけに、永住許可、在留資格「永住者」、取消制度、公租公課、帰化との違いを整理します。
日本では、在留資格「永住者」のことを、一般に「永住権」と呼ぶことがあります。
最近も、小野田紀美大臣が永住をめぐる質疑の中で、「我が国は『永住権』ではありません」「永住は権利ではないんです」「『永住許可』です」と指摘したことが報じられ、SNS上でも「永住権」と「永住許可」の違いが話題になりました。
この指摘は、入管実務上も重要です。日常会話では「永住権」という言葉が広く使われますが、法律上・実務上は、永住を「当然に保障された絶対的な権利」と見るのではなく、要件を満たした外国人に対して法務大臣が認める永住許可として整理する必要があります。
もっとも、「権利ではない」という一言だけで、「行政が自由に取り消せる不安定な地位」と理解するのも正確ではありません。永住者の地位は、許可によって認められる在留上の地位であり、許可後は法律上の根拠と手続に基づいて扱われる、法的に保護された在留資格です。
外国人本人、日本人配偶者、雇用主、支援者の間でも、「永住権を取る」「永住権がある」「永住権は取り消されるのか」といった表現はよく使われます。
しかし、入管実務では、「永住権」という言葉だけで理解すると誤解が生じることがあります。日本の制度上は、正確には、法務大臣による永住許可を受け、その結果として在留資格「永住者」を有する、という整理になります。
この記事の結論:「永住権」は日常的な通称として使われますが、入管法上は「永住許可」と在留資格「永住者」として整理する必要があります。永住者は非常に安定した在留資格ですが、何をしても一生失われない絶対的な権利ではありません。一方で、行政が自由に取り消せる不安定な地位でもありません。
「永住権」という言葉は通称です
日本では、在留資格「永住者」のことを、一般に「永住権」と呼ぶことがあります。
ただし、「権利」という言葉だけで理解すると、「一度認められれば絶対に失われないもの」と誤解されることがあります。
一方で、「永住許可」という言葉だけを見て、「単なる許可だから行政が自由に取り消せる」と理解するのも正確ではありません。
永住者は、許可によって認められる在留上の地位ですが、許可後は法律上の根拠と手続に基づいて扱われる、法的に保護された在留資格と考えるのが適切です。
法律上は「永住許可」を受けて「永住者」になる
永住許可を受けるためには、原則として、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることが必要です。
また、「日本国の利益に合すること」の中では、在留期間、刑罰歴、公的義務の履行、現在の在留資格の在留期間などが確認されます。
- 法律を守り、社会的に非難されることのない生活を営んでいるか
- 将来にわたり安定した生活が見込まれるか
- 原則として継続した在留歴があるか
- 納税、公的年金、公的医療保険料などの公的義務を適正に履行しているか
- 入管法上の届出義務を適正に履行しているか
特に近年は、納税、公的年金、公的医療保険料、入管法上の届出義務など、公的義務を適正に履行しているかが重要です。申請時点で支払済みであっても、当初の納期限内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価される点にも注意が必要です。
永住者は在留期間更新が不要で、活動制限もありません
永住者は、他の在留資格と比べて非常に安定した在留資格です。
就労資格のように活動内容が限定されず、在留期間の制限もありません。そのため、通常の在留期間更新許可申請を繰り返す必要はありません。
この点では、永住者は他の在留資格よりも大きな安定性があります。
しかし、在留期間更新が不要であることと、入管法上の義務がなくなることは同じではありません。永住者であっても、在留カードの有効期間更新、住居地届出、在留カードの管理など、入管法上の義務を守る必要があります。
| 項目 | 永住者の整理 |
|---|---|
| 活動制限 | 原則としてありません。 |
| 在留期間 | 制限はありません。 |
| 在留期間更新 | 通常の在留期間更新許可申請は不要です。 |
| 在留カード更新 | 必要です。在留カード自体には有効期間があります。 |
| 届出義務 | 住居地届出など、入管法上の義務があります。 |
| 取消制度 | 一定の場合には、在留資格取消しの対象となることがあります。 |
「権利だから一生絶対に失われない」は不正確です
永住者は、非常に安定した在留資格ですが、何をしても一生失われない絶対的な権利ではありません。
例えば、不正の手段により永住許可を受けた場合、新住居地の届出をしなかった場合、虚偽の住居地を届け出た場合などは、在留資格取消しの対象となることがあります。
また、永住者であっても、一定の重大な刑事事件により退去強制の対象となることがあります。
実務上の注意:「永住者だから何をしても大丈夫」「永住権だから一生絶対に失われない」という理解は危険です。永住者であっても、在留カード更新、住居地届出、公的義務、刑事事件などには注意が必要です。
「許可だから自由に取り消せる」も不正確です
一方で、「永住許可」という言葉だけを理由に、行政が自由に永住者の地位を取り消せると考えるのも不正確です。
在留資格の取消しには、法律上の根拠と手続が必要です。
入管庁は、取消事由の有無などの事実関係を確認し、対象者から意見を聴取し、証拠提出の機会を与えたうえで、取消し又は在留資格変更を判断することになります。
また、処分に不服がある場合には、取消訴訟等の手続を検討する余地もあります。
つまり、永住者は「絶対に失われない権利」ではありませんが、「行政が自由に奪える不安定な地位」でもありません。
税金・社会保険料の未払いと永住者制度
永住者制度では、公租公課の履行が重要な論点になっています。
公租公課には、税金だけでなく、社会保険料などの公的負担金も含まれます。
ただし、公租公課の未払いがあるからといって、直ちに永住者の在留資格が取り消されると考えるのは正確ではありません。
問題となるのは、支払義務があることを認識しており、支払能力があるにもかかわらず、あえて支払わないようなケースです。
病気、失業、生活困窮など、本人に帰責性があるとはいえず、やむを得ず支払ができない場合まで、当然に取消しが想定されているわけではありません。
実際には、不払いに至った経緯、督促への対応、支払意思、現在の生活状況、日本への定着性など、個別事情を踏まえて判断されます。
永住者と帰化は違います
永住者と帰化は、まったく別の制度です。
永住者は、外国籍のまま、日本に活動制限・在留期間制限なく在留できる在留資格です。
これに対して、帰化は、法務大臣の許可により日本国籍を取得する制度です。
帰化した場合、その人は日本国籍を取得するため、入管法上の在留管理の対象ではなくなります。
| 制度 | 内容 | 入管法上の在留管理 |
|---|---|---|
| 永住者 | 外国籍のまま、在留資格「永住者」として日本に在留する制度 | 対象になります。 |
| 帰化 | 日本国籍を取得する制度 | 帰化後は対象ではなくなります。 |
したがって、「永住者」は外国人としての在留資格であり、「帰化」は日本国籍の取得である、という違いを正確に理解する必要があります。
まとめ:「永住権」という言葉だけで判断しないことが大切です
「永住権」という言葉は、日常的には広く使われています。
しかし、入管法上は、法務大臣による永住許可を受け、その結果として在留資格「永住者」を有する、という整理が正確です。
永住者は、在留期間更新が不要で、活動制限もない非常に安定した在留資格です。
一方で、在留カード更新、住居地届出、公的義務、在留資格取消制度、退去強制制度など、入管法上の在留管理の対象であることに変わりはありません。
「永住権だから絶対に失われない」という理解も、「永住許可だから自由に取り消せる」という理解も、どちらも正確ではありません。
正確には、永住許可により認められる、法的に保護された在留上の地位と整理するのが適切です。
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